film festival

#9 『ヒューマン・シネマ・フェスティバル2013』

なん・みん【難民】- 戦争・天災などのため困難に陥った人民。

特に、戦禍、政治的混乱や迫害を避けて故国や居住地外に出た人。(広辞苑)

 NTM特集第2回で「難民雇用支援」を取り上げた。この記事を読んで、日本にも多くの難民が暮らしていることに驚いた方もいるだろう。私たちの日常の中では、あまり身近ではない難民問題。しかし、世界の情勢は緊迫している。

 昨年2012年だけで、新たに故郷を追われた人は87万5000人以上、国内で避難を余儀なくされた人も数十万人に上り、これは過去10年で最悪のものだそうだ。

 彼らは一体、どんな生活を送っているのか?

 その実態を少しでも知ってもらおうという映画祭が、10月に開催される。国連難民高等弁務官(UNHCR)の活動を支えるために、広報・募金活動を行っている特定非営利活動法人・国連UNHCR協会が主催し、全国のイオンシネマを会場に行われるチャリティー上映会だ。

 ポイントは、無料で観られるということと、全国30ヵ所もの会場が用意されていること。

 無料で観られるとなれば足を運ぶ人も増えるだろうし、地方に暮らす人にも観るチャンスがあるというのは意義あることだと思う。私もずっと地方で暮らしていていたが、興味はあっても東京開催のみということで参加できないイベント等が本当に多いものだ。しかも、今回上映されるのは、地方では観る機会の少なかった作品でもある。

『ル・アーブルの靴みがき』

©Sputnik Oy 監督:アキ・カウリスマキ 2011年 フィンランド・フランス・ドイツ
©Sputnik Oy 監督:アキ・カウリスマキ 2011年 フィンランド・フランス・ドイツ

 ひとつは『ル・アーブルの靴みがき』。映画好きにはお馴染みの、フィンランドの巨匠アキ・カウリスマキ監督作品で、日本では今年公開されて大変好評を博した。主人公は、北フランスの港町に暮らすマルセル。

 靴みがきで生計を立てる初老の男性だが、彼の元に、ある日、アフリカからやってきた難民の少年が現れる。時にユーモアを交えながら2人の交流が描かれてゆくが、カウリスマキ監督独特のシニカルな演出も冴えていて肩の力を抜いて観られるヒューマンドラマとなっている。

『そのひとときの自由』

©Les films du losange 2011 監督:アラシュ・T・リアヒ 2008年 オーストリア・フランス
©Les films du losange 2011 監督:アラシュ・T・リアヒ 2008年 オーストリア・フランス

 もうひとつの『そのひとときの自由』は、真っ向から難民問題を扱った重厚な作品で、2008年モントリオール世界映画祭で金賞を受賞している。

 イランを脱出してトルコへと向かう3組の難民。命がけの道程、そしてひたすらに難民認定が下りる日を待つトルコでの暮らし…彼らはただ普通に暮らしたいだけなのに、それを手にすることがこれほど困難だとは。

 やがて、それぞれに未来へと歩き出す日が来るが、そこには悲喜こもごも、バラ色の未来を手にする者もいれば、失意に暮れる者もいる。現実はシビアだ。しかし、どんな条件下でも大切なことは「尊厳」を持って生きることだと、この映画は教えてくれる。

 いずれの作品も、難民問題の実態について知り、考えるきっかけになるものだと思う。会場では難民支援のための寄付を募るそうだし、何か具体的なアクションを起こしたいと思う人は国連UNHCR協会からの情報を手にすることもできるだろう。ただ映画を楽しむだけではなく、参加した人のその後の行動へのヒントにもなるこのイベント。是非多くの人に足を運んでもらいたい。

 

NTM

(文・河村由美)

『ヒューマン・シネマ・フェスティバル2013

10/5(土)6(日) 全国30ヵ所で開催

入場無料

http://humancinemafestival.org/

2013/08/10

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コメント: 2
  • #1

    文男 (日曜日, 11 8月 2013 12:20)

    頑張っても頑張ってもなくならないのは高校生難民、大人難民、老人難民、ホームレス難民、国際難民。世の中が狂っている。

  • #2

    いとう・しんご (金曜日, 16 8月 2013 04:57)

    日本にいると難民を知ることはむつかしいですね。情報が少なすぎる。マスコミも難民についてはあまりとりあげようとはしません。その意味でこの映画は我々日本人にとってよい機会だと思います。

movie

#10『もったいない!TASTE THE WASTE』

©SCHNITTSTELLE Film Köln,THURN FILM
©SCHNITTSTELLE Film Köln,THURN FILM

 私はおばあちゃん子である。両親が共働きだったため、高校生までは家にいるほとんどの時間を祖母と一緒に過ごした。戦中・戦後の貧しい時代を生き延びてきた祖母は、とにかく物を大切にしろということを繰り返し私に説いて聞かせ、特に食べ物については「ゴハンを残すと目がつぶれるよ!」と口癖のように言っていた。だから、私はいまだに食べ物を残すことには強い抵抗感を覚えるのだが、そんな私にとって、これはあまりに衝撃的なドキュメンタリーだった。

 監督のバレンティン・トゥルン氏はドイツでTVドキュメンタリー番組を手がける他、新聞や雑誌のコラム、ノンフィクションの編集など多くのメディアで社会問題に取り組んでいる人物だ。彼の元に入ってくる膨大な情報を頼りに、ドイツを中心としたヨーロッパ各国、アメリカ、日本、カメルーンなどカメラは世界中を廻り食料廃棄の現実を映し出している。

 先進国のスーパーでは賞味期限が切れる前に大量の商品が廃棄され、パン屋では常に焼きたての商品を並べるために少し時間の経ったものは廃棄され、形が悪いというだけで野菜や果物が廃棄され…廃棄、廃棄、廃棄。映画によれば、食品の3~5割が食卓に届く前に捨てられているそうだが、さすがにこれだけの食べ物が捨てられる映像は強烈なインパクトがあり、気分が悪くなる。

 賞味期限に関して厳しい日本では、スーパーのお弁当がたった半日で捨てられているのを見て、思わず「私が食べるよ!」と心で叫んでしまった。

 “もったいない”と思いながらも、経営者はもとより現場で働く人たちも、売れないのだから、仕事だから仕方ないと割り切っているようだ。これが、世界中が巨大なマーケットと化し利益第一主義に陥っている現代社会の最大の問題点。しかし、ウィーンの廃棄物研究者はこう証言する。「食品を捨てるということは、かけられた費用や労力も全て捨てるということ」確かにせっかく作ったものを捨ててしまうのだから、非効率極まりないではないか。大いなる矛盾だ。

 パリのフードバンク*で廃棄食品の仕分けを担当するカメルーン出身の女性は「作業員が全員女性だったら、捨てるものなどないのに」と自らの仕事を振り返る。多くの野菜や果物を廃棄の危機から救ってきた彼女だが、それでもまだ最終廃棄されるものの中には十分に食べられるものも残っているという。彼女の故郷カメルーンはバナナの一大産地であるが、5人家族に4本のバナナしか買えないことも珍しくはない。さらに、先進国の過大な要求がカメルーンの生産者を圧迫し、ランド・ラッシュ(土地の収奪)まで行われる現実もあるのだ。

 この負のスパイラルを断ち切ることはできないのだろうか?

 映画ではいくつかの取り組みを紹介している。廃棄食料の一部を家畜の飼料としてリサイクルしている日本、エネルギー源として利用しているEU、また、イタリアでは廃棄寸前の食品を使った料理を1,000人にふるまうイベントが行われたり、ドイツでは廃棄された食品を使って子供たちと調理実習を行ったりと様々な啓蒙活動も行われているそうだ。

 とにかく情報量の多い今作なのだが、問題提起のみならず、私たちに今できることが提示されていて、きっと何かアクションを起こすきっかけになると思う。

 ちなみに日本での公開に際しては、チケット1枚につき20円が寄付金となる。これは発展途上国の学校給食1食分。まずはそこから、はじめてみませんか?

 *フードバンクとは、品質に問題ない廃棄食品を引き取り、食べ物に困っている施設などに届ける活動 

 

NTM

(文・河村由美)

 

監督:バレンティン・トゥルン

撮影:ロラント・ブライトシュー

編集:ビルギット・ケスター

配給:T&Kテレフィルム

2011/ドイツ/88

9/21(土)より東京都写真美術館ホール(恵比寿ガーデンプレイス内)他、全国順次公開

 

http://mottainai-eiga.com/

2013/09/07

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コメント: 1
  • #1

    タケシ (水曜日, 11 9月 2013 11:43)

    食料廃棄は世界中の問題。問題意識が高くなりつつあることがせめてもの救い。超長期戦になります。