art exhibition

#13 『アール・ブリュット』

作:澤田真一
作:澤田真一

 アール・ブリュット(Art Brut)=の芸術

 私がこの言葉を初めて知ったのは、昨年夏に静岡県の浜松市美術館で開催された「アール・ブリュット展」の取材でのこと。まずは学芸員さんの説明を聞いたのだが、正直、言葉だけではどんな芸術なのかほとんど理解できなかった。「生…って何?」「現代アートとは違うの?」「作品のクオリティーは?」様々な疑問が頭に浮かんだ。しかし、展示室に足を踏み入れた途端、頭ではなく心がビビッと反応してしまったのだ。

 

(文・河村由美)

 

 この言葉の生みの親はフランス人画家ジャン・デュビュッフェ(1901~1985)で、美術教育を受けていない作家、また既存のアートに影響を受けていない作家の作品を総称してこう呼んだそうだ。

 アール・ブリュットの作家には、知的障害を持つ人が多い。心に浮かんだことを真っ直ぐにカタチにする、その表現方法は作家によって実に様々だ。彫刻、絵画、グラフィック、造形…展示室にところ狭しと並べられた作品は、確かに既存の概念にとらわれず“超”がつくほど個性的で、豊かな発想力に満ち溢れていた。

 誰かに見せたいとか、作品を評価されたいとかいうモチベーションとは無縁の、無垢なる世界。私はそのあまりのインパクトに圧倒されつつも、ひとつひとつをじっくり眺めるうちに自然と頬が緩んでいる自分に気づいた。なぜだろう?

 ユーモアや愛嬌を感じるものが多く、なんだか作品が話しかけてくるような気さえしてするのだ。言葉では上手く表現できない作家たちは、作品にありったけの気持ちをぶつけているからかもしれない。思わず立ち止まって、彼らの“言葉”に耳を傾けているうちに、随分長い時間を展示室で過ごしていた。

  展示作品はかなり多かったが、実はアール・ブリュット作品が世に出るのは簡単なことではない。なぜなら作家たちが自分で“売り込む”ことはほとんどないから。先述のように、彼らは多くの人に見てもらいたくて作品を作っているわけではなく、あくまでも内なる衝動をカタチにしているだけのこと。誰かが発掘しなければ、作品として世に出ることはないのだ。作家本人はもとより、周囲の人も、それが“アート”と呼ばれることすら想像していなかったかもしれないし、ましてやアーティストとして生計を立てるなんて、夢のまた夢だっただろう。

 こうした状況が変わる大きなきっかけとなったのが、2010年3月から翌年1月にかけてパリ市立アル・サン・ピエール美術館で開催された「アール・ブリュット・ジャポネ展」。アール・ブリュットの本場で、延べ12万人もの観客が押し寄せた。作品への評価も高く、これを機に日本のアール・ブリュットは世界から注目されるようになったのだ。

 パリでの成功、そのこと自体はもちろんだが、展覧会開催に向けての準備期間も大きな経験になったに違いない。日本では、滋賀県が早くから障害者アートの発掘に取り組んできた。その歴史は50年近くにわたり、2004年に近江八幡にオープンした「ボーダレス・アートミュージアムNO-MA」は全国でも珍しい公的ミュージアムとして、障害のある人の作品もそうでない作品も並列して展示してきた。美術界にとっては画期的な取り組み。こうした経験があったとはいえ、海外の展覧会に出品するにあたってはあらためて作家ひとりひとりと会い、家族の理解を得なければならない。

 さらに、著作権の問題も立ちはだかった。本来であれば著作権に関しては作家本人の判断で決められる事柄なのだが、知的障害がある場合、契約締結が難しいために後見人を立てなくてはならなかったのだ。しかし、これもプロのアーティストとして巣立つための環境づくりのひとつ。サポートの輪が広がりノウハウを得たことは、作家の自立支援に大きく役立っている。

 

動き出したら楽しいのに! 

 先日、東京の文部科学省情報ひろばでアール・ブリュットの展覧会がはじまったというので行ってきた。

ひときわ目を引いたのは澤田真一さんの粘土造形だ。埴輪のような形、ワニのような形…形はいろいろだが共通するのは無数の“とげとげ”。

 グロテスクでもあるけど、よく見るととても愛らしくて目が離せなくなってしまう。動き出したら楽しいのに!なんて妄想まで広がったりして。

 乱立する乳房や性器、ハサミのモチーフを絵の中に盛り込むすずき万里江さんの作品は、マジックで描かれた輪郭に点描の要領で色が加えられている。ものすごく細かい作業。そこには青少年期に感じた性器への嫌悪感や、子宮から生まれる生命への訝しさが表現されているのだという。

 嫌いだけど気になる、だから描きたい、彼女の衝動がほとばしっている。

 そして、私の一番のお気に入りは、親指サイズの戦隊ヒーロー。アルタイ(パンやお菓子などが入ったビニール袋の口を閉じる針金のこと)を使ってものの5分ほどで作り上げてしまうそうだが、これが信じられないほど精緻なデザインなのだ。

 私も手持ちぶさたにアルタイをひねったりしていることがあるが、まさか何かの形にしようなどとは思いもつかなかった。

 作者の勝部翔太さんはよっぽど戦隊ヒーローが好きなんだろうな、作品同士を戦わせたりもするのかしら?などと想像しながら眺めると、やっぱり頬が緩んでしまうのだ。

 アール・ブリュット、他ではちょっと味わえないアート体験。また、私の心がビビッと反応した。

 

NTM

アール・ブリュット・ジャポネ展 

感動と驚嘆を呼び起こす、日本のアール・ブリュット

福岡市美術館

2013年 ~11月24日(日)

9:30~17:30

(休館日:毎週月曜日)

http://www.fukuoka-art-museum.jp/jb/html/jb01/2013/artbrut/artbrut.html

 

2013/10/19

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concert

#14 『子どものためのジャズコンサート』

提供写真
提供写真

 台風一過の抜けるような青空が広がった10月27日、六本木ヒルズアリーナに楽しげな音楽が鳴り響いた。一流ミュージシャンと子どもたちが共演する音楽イベント、その名も「子どものためのジャズコンサート」

 本格的なJAZZ演奏に加え、この日のために一生懸命練習してきた小学生たち、そしてピアニカやリコーダーなど思い思いの楽器を持って会場に集まった子どもたちによる即興演奏が披露されたのだ。ハロウィンが近いこともあって、仮装した子どもたちもいっぱい!観客を含め約600人が秋の休日を存分に楽しんだ。

 

(文・河村由美)

 

 ところで、JAZZというと“大人の音楽”というイメージがあるかもしれない。なぜJAZZなのか?主催のNPO法人「KidsFun」米倉誠一郎理事長に聞いてみたところ、「JAZZは躍動感があって即興性の高い音楽。既存の枠にはまらないJAZZの演奏を通して、枠組みから外れる楽しさを知ってほしい」と熱っぽく語ってくれた。

 確かに、同じ曲でも演奏家やその時のステージによって全く違う表現が味わえるのがJAZZの醍醐味で、だからライブで聴くのが最高!というのが大半のJAZZファンの心境だろう。この日の演奏は、とにかく楽しくそして優しく、賑やかでカラフル、青空に向かってたくさんの音符が飛び出していくようなイメージだった。

 ルールにがんじがらめにされ、学校と塾と習い事と…なんて忙しい日々を送る現代っ子が多い中、米倉理事長が言うような「枠組みから外れる楽しさ」を子どもたちは体感したようである。

 参加校のひとつ福島県いわき市立湯本第一小学校のみなさんは、軽快なスウィング感が楽しいスタンダードナンバー「シングシングシング」(ベニー・グッドマン作曲)を演奏。たくさんのお客さんを前に、最初は少し緊張した様子だったが、実に堂々とした演奏で会場を沸かせた。私も思わずスウィング!自然とステップを踏んでいた。

 約20人でバスに乗って東京にやってきた子どもたちは、車窓からスカイツリーが見えた途端に大歓声をあげ、お天気が良かったため運よく富士山も見ることができたという。一生懸命まじめに練習してきたという子どもたち、この日のステージはかけがえのない想い出になったことだろう。

 米倉理事長は「被災地の子どもたちに参加してもらうことで、君たちのことを忘れてはいないよ、というメッセージを伝えたかった」という。

 また、出演ミュージシャンの一人でバンドマスターの古野光昭さんはこう語る。

「小学生の頃に触れた音楽って今でも強く印象に残ってるんです。僕の場合は自衛隊のマーチでした。それが、自分の音楽の原点。今日参加してくれた子どもたちの中からも、2人くらいは(笑)プロのミュージシャンになってくれると嬉しいですね」

 古野さんは“ベースの巨匠”との異名をとる日本を代表するベーシスト。他に、テナーサックスの川嶋哲郎さん、ピアノの納谷嘉彦さん、ドラムの小山太郎さんに加え、世界で活躍するヴァイオリニスト寺井尚子さんがステージに立った。テクニシャン揃いの贅沢なステージ。

 さらにプログラムの中には“JAZZ講座”さながらにリズムパターンの実演まで組み込まれていて、おなじみの「きらきら星」を4ビート、サンバ、ワルツ、8ビートと4種類の違うリズムで演奏してくれた。

 目をきらきら輝かせながら、そして時には体でリズムをとりながら、ステージを見つめる子どもたち。今すぐ形にならなくても、古野さんが言うようにこの日の経験がいつかきっと未来の糧になると思う。

 NPO法人「KidsFun」は「多くの子どもたちが文化・芸術・スポーツ等の心豊かな文化活動から生まれる感動体験により、創造性・向上心・熱意ある主体的な行動力を身につけ」ること、そして閉塞した日本社会にイノベーションを起こしていけるような「爆発的成長力・変革力」を育成することを目的に活動をしている。(「子どものためのジャズコンサート」パンフレットより)

 この理念のもとコンサートを企画し今年で4回目になる。理解あるパートナー企業にも支えられており、お金を出すだけでなく、環境問題や東北復興支援などに関連したブース出店等によって子どもたちに豊かな知識を、そして親子のコミュニケーションの場を提供している。

 ミュージシャンもパートナー企業も、それぞれのプロフェッショナルが集結して子どもたちと真剣に向き合ったイベントとも言えるのである。

 ステージの最後を飾ったのは「ルパン三世のテーマ」。子どもたちの無邪気な笑顔と同じくらいに、大人たちの充実した笑顔も印象的なフィナーレだった。

 

 NTM

 

NPO法人「KidsFun」

https://www.facebook.com/npo.kidsfun

 

2013/11/02

コメント: 2
  • #2

    newstomove (月曜日, 04 11月 2013 16:18)

    NTMで紹介している活動の今後のスケジュールなど、掲載するようにいま考案中です。ぜひご注目を!

  • #1

    ikuko (日曜日, 03 11月 2013 19:34)

    楽しそう!事前に知っていたら是非行きたかったです!
    胎教や子育てにはクラシックと思っていましたが、ジャズだと柔軟性のある子供になるかも?
    次はいつあるのでしょうか。。。