第23回:イスラムとは何ですか?

religion


 連日流れてくる残虐なニュース。国連安全保障理事会も過激派組織「イスラム国」への資金提供や、テロ目的で渡航する者の処罰を各国へ義務付ける決議を全会一致で可決した。でも、そもそもイスラムって何だろう?日本にも10万人を超えるムスリムが生活すると言われている。複数のモスクが建設され、髪をスカーフで覆った女性たちを見かけるようになって久しい。

 彼らが信じているものってそんなに危険なものなの?本当に?考えてみれば、全然知らないイスラムの世界。身近なムスリムたちにきいてみよう。

 

(文・小澤治美 写真・宮津かなえ)


NTM的イスラム入門

NTM:まずは基本的なところから。イスラム教は何を信じているの?

ナセル永野さん:よく言われるのは、六信五行というイスラムの基本。1)神様アッラー、2)預言者ムハンマド。実は(同じ預言者として)キリストやモーゼも信じている。3)聖典、コーランだけじゃなく旧約・新約聖書も入ってくる。4)天使の存在、5)自分の運命、6)来世。この六つが信じるものとして絶対視されている。それから五つの行い。1)お祈り、2)断食、3)喜捨(施し)、4)メッカ巡礼、5)信仰告白、ムハンマドはアッラーの使徒であるという、お祈りの前に言わなければいけないもの。これがミニマム。

イスラム教がキリスト教やユダヤ教と同じ一神教を起源としているって本当?

アダムとイブのところからつながっている。コーランには旧約・新約聖書の内容も入っている。だから、コーランを燃やすキリスト教徒はいても聖書を燃やすイスラム教徒というのはきいたことがない。信じるもののひとつだから。

ムスリムの一日ってどんなもの?

イスラム教の国では1日5回「さあ、お祈りの時間だからみんなでモスクに行こう」ってスピーカーで流れる。日本だと社会システムがそれでまわっていない。あんまり大きな声では言えないけど、僕はお祈り5回はできていない。でもそれはコーラン的にも


オッケー。まとめてやればいいから。(どこかのタイミングで)5回分やってもいいし。僕はだいたい3回。朝起きて着替えて1回、家に帰って部屋着で1回、あとは寝る前に1回。

イスラムの習慣には厳しいイメージがある。ラマダン(断食)で食べちゃいけません、とか。

コーランには病気の人、子ども、老人、妊婦、授乳中の女性、生理中の女性、それから旅人などは合法的に食べてもいいって書いてある。あと、限界だと思った人。その分ほかの時にやるか決められたお金を貧者に施しをするか。絶対にしなきゃいけないということでもない。他の人に「食べていい?」ってきく必要もまったくない。

神様との一対一の関係だってよくきくけど?

「コーランではダメって言われているけど、こういう理由でしますから許して」みたいなね。でも悪いことをしたらもちろん罰則規定がある。僕たちはそもそも論として、ここ(肩)に天使が2人付いている。片方の天使は自分の善良、プラスポイントを計算してくれていて、もう片方の天使は自分のマイナスポイントを計算している。死んだときにこの天使が前にでていって、神様と3人で話し合って天秤にかける。天国にいくか地獄に落ちるか。死後どうなるかを決めるために、生前自分がどう生きるかを神様と契約している。

食べ物の決まりは?

豚を食べない。アルコールを飲まない。人によってはストイックに豚成分まで分析する人もいるけど、僕はそこまではもとめない。固形のハム、ベーコンくらいまでかな。もちろん豚肉は食べないけど。普通に外食もできる。日本には海鮮丼という美味しい物もある。

モスクでは何をするの?

お祈り。あとはコミュニケーション。人が集まるから。モスクに行ったからって「コーランのこの章はいいわ」みたいな話ばかりではない。「あそこ結婚したらしいよ」とか、女子会と一緒。ふらふらっと行くところ。

モスクにも和尚さんみたいな人はいる?

イスラムには聖職者がいない。イマームというイスラムの知識を一番持っている人がお祈りの先導役として立つことはある。でもその人は聖職者というわけではない。物知りじいさんみたいな感じかな。子どもでもいい。コーラン全部覚えている子どもとかいるし。

ナセル永野さん

臨床宗教師。WCRP(世界宗教者平和会議)青年部幹事。大学、大学院とイスラム研究に従事し2008年にイスラム入信。2012年東北大学臨床宗教師研修を終了。

ナセルさんも先導する?

僕はアラビア語が下手だからあまりやらない。コーランを読むのはアラビア語だ。

聖日である金曜日にはお祈りに行く?

あまり行かない。だってウィークデーだし。行ければ行く。

旅行先ではどのモスクに行ってもいいの?

まったく問題ない。登録制もないし檀家制度もない。どこにいってもオッケー。ただ観光客と間違えられて嫌な顔をされることはあるかもしれない。そういう時はコーランを読む。

すごくオープンな宗教のようにきこえるけど、なぜ仲が悪くなるの?

ムスリムって世界に18億いる。たった10人の会社ですら派閥が生まれるのに、18億いたら対立構造は生まれざるをえない。宗教云々じゃなくて人間対人間。どこまでいったってエゴがある。そこを宗教だからというのは間違いだと思う。

イスラムは西洋の文化に虐げられてきたと感じる?

搾取構造はいまでもある。イスラムの国の半分以上は貧困国。植民地にされてきた国だしいまでも欧米企業が労働力を搾取している構図がある。オイル(石油)が出て云々とか。対欧米というより企業構造のような気もする。

「イスラム国」では、自らを“カリフ”とするアブバクル・バグダディ指導者の元に人々が集まっているとか。カリフって何?

イスラム教では最初にムハンマドという人に啓示が降りてきた。この人はイスラム・コミュニティのリーダーだった。この人が亡くなった時、リーダーを継承していった人がカリフという存在。

ローマ法王的な感じ?

ローマ法王は権威づけられて“聖職者”になってる。近いとは思うけど、イコールではない。ダライラマのほうが近いかもしれない。それがオスマントルコの崩壊でいなくなってしまった。それから90年ぶりに帰ってきたのがいまのカリフ。でもカリフってずっと継承していくものだから、消えた後どうするかってわからない。言った者勝ちなのかな。

世界のムスリムはカリフを必要だと思っている?

思ってる。僕も思ってる。イスラム的にもめ事があったときに鶴の一声になる可能性があるから。

「イスラム国」に引き寄せられる人々とナセルさんが信じているものは本当に同じ?

彼らもイスラム教はイスラム教。ただ考え方が違う。同じイスラム教徒だって10人いたら10人考え方が違うし、個人ベースとしか言いようがない。18億を一言で片付けるって無理だ。

どうしてあそこまで過激になるの?

コーランの中ではっきり書かれているのは、殺人はもちろん悪いことだけど虐げられている状態だったら戦をしてでも自由を勝ち取っていいということ。『迫害は殺害より、もっと悪い』(第2章191節)と。それを極端に解釈しすぎると「イスラム国」みたいになってしまう。それは過激というか、傲慢というか。

自由を勝ち取るといっても、あらゆる独立戦争は侵略になりうる。

そこが難しい。そこが人間の限界。何のために侵略するのか、結局は利益。だから利益追求心をさげていくことが人間には求められるのではないかな。

どう生きるのかという個人の問題?

それが本来の宗教だ。

 

NTM


コメント: 0